すみ丸ゴシック
1954年に国鉄の「鉄道掲示器規定」が定められ、書体が『楷書体』から『丸ゴシック』へと変った時に株式会社新陽社からの請負文字デザイナーとして当社社長(当時)の佐野稔が登用される。
佐野の『丸ゴシック』は非常にスマートなもので、文字の重心を下げて懐を大きくとり、平仮名の曲線が特に美しいとの評価をうけ、国鉄ではコンペの結果、国鉄のサイン文字に最適としてこの文字が採用となる。
後に国鉄の規定が改訂され、書体は『すみ丸ゴシック』(『角ゴシック』の線の末端部や角にわずかな丸みのついた書体)へと変わる。その後、国鉄全駅で必要とする約3,500字の文字盤を製作し、完成したのが『サインGB』で国鉄では『JNR-L』と呼んだ。
1987年に国鉄は民営化され、JR各社はサインに写植書体の『ゴナ』を採用したため『JNR-L』は短期間で姿を消すこととなった。
そのような状態となっても、JR東海では東海道新幹線、在来線の駅名標に限り『ゴナ』を使わず、佐野の『すみ丸ゴシック』を使用している。
これはJR東海の元社長の須田寛氏に国鉄時代からこの書体を高く評価していただいていた結果であり、一時は姿を消していた佐野の手書き書体は文字盤化して現在も使用されている。